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2024/09/08

2023 いい日旅立ち・西へ【番外-1】近鉄特急「ひのとり」

 5日間の鉄道旅行を満喫した私は、実家に2泊し、12月1日に息子の住む大阪へ向かった。大学合格直後にアパート探しに同行して以来である。



Img_5825  名古屋からの移動には、近鉄特急「ひのとり」を利用した。
 名古屋-新大阪間を50分足らずで結び、自由席で5,940円の新幹線に対し、近鉄特急は2時間~2時間半を要するが4,790円と安い。ひと昔前ならば金券ショップへ行けば回数券がばら売りされており、3,200円ほどで利用できた。


 だから私は、この区間の移動となると近鉄特急を利用するのが学生時代からの習性のようになっている。回数券の廃止で運賃・料金の格差は縮小傾向にあるが、近鉄特急は「快適さ」というもうひとつのアドバンテージを持っている。当時の近鉄特急は乗車してすぐにおしぼりサービスがあったし、インテリアには余裕と気品が感じられた。名阪ノンストップ特急に運用されていた「アーバンライナー」のデラックスシートは、400円ほどの追加投資でJRグリーン車並みの3列シートを利用でき、私のお気に入りだった。


 現在、近鉄の名阪特急は、津・鶴橋・大阪上本町に停車する「甲特急」が2020年に登場した「ひのとり」、途中主要駅に停まる「乙特急」が「アーバンライナー」でそろえられており、大変贅沢なラインナップである。「ひのとり」に乗車するためには、レギュラーシートで200円、プレミアムシートで900円の追加投資が必要になるが、せっかくの機会でもあり、「ひのとり」のプレミアムシートを体験してみたい。早い段階で私は近鉄名古屋発16時の特急券を購入し、最前列の席を確保しておいた。


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 近鉄名古屋駅の雰囲気が私は大好きである。行き止まり式の地下駅の雰囲気は、他の私鉄のターミナルとは一線を画しており、特急専用の4・5番ホームにはひっきりなしに特急電車が出入りする。15時30分に大阪難波行き「アーバンライナー」が、ウェストミンスターの鐘と「ドナウ川のさざなみ」に送られて発車すると、37分には鳥羽から、49分には大阪難波からの「アーバンライナー」が到着、乗客を降ろすと車庫へ引き上げていく。50分には鳥羽行き「サニーカー」が、ウェストミンスターの鐘と「八十日間世界一周」に送られて発車。この光景だけでも旅立ちのワクワク感が高揚する。


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 鳥羽行き特急が発車した後の5番線に、いよいよ「ひのとり」が入線する。深いメタリックレッドをベースにした塗装は気品があり、これまでの近鉄特急とは全く趣が違う。「ひのとり」のエンブレムも孤高の印象である。
 8号車後ろ寄りのドアから乗車すると、デッキのすぐわきにロッカーが並んでいる。その奥には、コーヒーやお菓子の自販機、おしぼりなどが置かれたサービスコーナーがある。乗務員による車内販売やおしぼりサービスはなくなったが、セルフサービスで残されている。このあたりが近鉄らしい配慮である。


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 階段を登ったハイデッカーになっている座席は、車体幅を一杯に使った大柄な3列座席が並ぶ。プレミアムシートの座席間隔はそれでなくても130cmと新幹線グランクラス並みに広いが、座席を一杯に倒しても後ろの人に迷惑が掛からない「バックシェル型」になっており、贅沢である。最前列の一人掛けに腰掛けると、大きな窓からの展望は素晴らしい。隣の二人掛けには、女性二人と小さな男の子が座っている。発車後、地下から地上へと駆け上がると、すぐに米野車庫の横を通る。「ひのとり」や先ほど引き上げていった「アーバンライナーnext」が休んでいる。男の子が嬉しそうな歓声を上げる。


 私も普段ならば車内の探索に出掛けるところであるが、前面展望の楽しさとシートの掛け心地の良さに、すっかり動く気力をなくしてしまった。「伊勢志摩ライナー」「ビスタカー」そして「観光特急しまかぜ」と、次々にすれ違う列車に退屈している暇もない。伊勢中川の短絡線を渡って大阪線に入る頃には、興奮し疲れたのか隣の男の子は爆睡である。そして私もうとうととしたらしい。気が付くと外は薄暗くなっており、列車はラストスパートに掛かっていた。


Dscn5928  大阪市内に入り、鶴橋、大阪上本町と停車し、18時05分、地下駅の大阪難波に到着した。列車は乗客を降ろすとすぐ、西方にある引き上げ線へ移動していく。発車も到着もあわただしいが、これもまた名阪特急のいつもの姿である。
 近鉄名古屋-大阪難波間で「ひのとり」のプレミアムシートを利用すると5,690円となり、新幹線との差は数百円レベルとなる。国鉄運賃が安かった時代にはこれで新幹線に旅客が逃げ、一時近鉄名阪特急は瀕死の状態だったのであるが、国鉄運賃の度重なる値上げにより息を吹き返した。
 運賃格差は再び縮小傾向にある現在だが、近鉄特急は価格差以上に快適性を指向しているように見える。よほど急ぐのであればともかく、グランクラス並みの車両に新幹線より1時間余計に乗れるだけでも十分に値があるように思う。
 



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コメント

鶴橋、森之宮、大阪城、なんば方面、阪神沿線、神戸に行くときは時間に余裕があれば近鉄特急を利用しますけど、大体の時間帯は隣が空いているし、ほぼノンストップなので気楽ですね。荷物も隣におけるし。新幹線だとこだま以外は隣に誰か来ることが多いので、窓側だと降りる時に隣の人が変な人だとテーブル出しっぱなしで寝てることもあって、当たり外れが大きいのが・・・

投稿: かわうそくん | 2024/09/09 20:17

 かわうそくんさん、ありがとうございます。
 全く同感です。あとは所要時間1時間の差を容認できるかどうかですね。新幹線も、普通車でもシートピッチが広いので、体の長い自分にとっては案外悪くはないのですが。
 運賃の値上げなどもあって、価格差がだいぶ詰まってきてしまったのが残念です。

投稿: いかさま | 2024/09/23 21:04

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