1995年・最後の長い汽車旅【14】そして5年ぶりの九州へ
前回の続き。
本州最西端の駅であり、JR西日本とJR九州の境界駅でもある下関には、17時54分着。駅の中を軽く散策した後、18時06分発の博多行き普通列車でいよいよ九州へ入る。高校2年生から3年生にかけての春休みに、2週間近くかけてJRを中心に乗り歩きを楽しんだ時以来、5年ぶりの九州である。前回は専らJRの乗りつぶしを主眼においていたので、今回は他の鉄道やバスも含めた、ゆったりとした旅をしたいと考えている。この5年の間に、JR九州がどのように変化したのかを、自分の眼で確かめる楽しみもある。
【参考】1990年春 九州一周の旅
本州から九州への普通列車は、昨日の鈍足特急「やくも」以来の電車である。3ドア・セミクロスシートの近郊型電車、415系の4両編成で、JR九州標準の白地に青帯を巻いている。最後尾の1両だけが喫煙可能な車両となっているのは、5年前から変わらぬJR九州独特の流儀である。もちろん喫煙車に乗り、無事窓際の席を確保すると、待ちかねていたように煙草を取り出して一服。5年前なら明らかに禁煙車を選んでいたのだが、つまらぬものに手を出すようになったと思う。JR九州の普通列車が全車禁煙となるのは、この4年ほど後のことである。
列車は発車するとすぐに関門トンネルに突入した。全長3.6kmほどと、青函トンネルの10分の1にも満たない長さだが、トンネルを抜ければそこは九州である。本州と関門トンネル内は直流1500V、九州内は交流20000Vと電化方式が異なるため、当時の古い電車では門司駅手前で切り替えのため車内の照明が一瞬消えた。
九州の玄関にあたる門司、新幹線によって北九州の新玄関となった小倉を過ぎて、18時45分、かつて北九州最大の賑わいを見せた鉄鋼の町、八幡で下車する。大学の親しい友人の故郷であるこの街がどんなところか見てみたく、西鉄バスで中央町へ向かう。この辺りは1992年まで西鉄北九州線が路面電車を走らせていたところであるが、日が暮れたせいもあるのか、面影は見つけられなかった。
中央町はちょっとした繁華街であったが、ダイエーがこうこうと明かりをつけて営業しているほかは、日曜の夜ということもあり開いている店は少なく、静かだった。近くで店を開けていた喫茶店に入り、コーヒーを飲みながら、タウンページで宿を探す。さすがに古くからの工業都市だけあって、商人宿といった感じの旅館の広告が多い。
そのうちの1軒、八幡駅に近いビジネス旅館「憩荘」を予約。バス・トイレ付きで1泊3,000円は激安だが、予想どおり値段相応の古ぼけた商人宿といった風情の建物である。おばさんに前金で宿代を払い、部屋に入ると、6畳ほどの畳敷きの部屋に布団が敷いてある。バス、トイレも民家のそれのようだが、値段を考えれば文句はない。今回の記事を書くにあたって、当時の領収書にあった住所をもとに調べてみたが、存在しなかった。当時の雰囲気と30年という時間を考えれば、当たり前ではあるが寂しいものである。
荷物を置いて20時22分の電車で小倉へ引き返し、夜の町を歩いた後、夕食を取った。22時の電車で八幡へ戻り、宿へ入って風呂を浴び、布団に潜り込んだ。何となく単調な1日だったが、身体は疲れている。ゆっくり休んで、九州本番に備えることにしよう。
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コメント
いよいよ九州ですね!
宿賃がほんとリーズナブル、ほんとイイときに鉄旅されましたね^^
投稿: キハ58 | 2025/07/02 09:31
キハ58さん、ありがとうございます。
最後に触れようと思っていましたが、この旅行中、素泊まりで1泊5,000円を超える宿には泊まっていません。中にはいろいろとすごいところもありましたが(笑)、おいおいご報告していくことになると思います。
投稿: いかさま | 2025/07/07 02:06