JR北海道 2024年度の利用状況から見る現状
久々に硬派な話。
7月4日、JR北海道は2024年度の路線・区間別利用状況をプレスリリースした。
⇒JR北海道のプレスリリース
JR北海道は、去る5月9日に2024年度の決算をリリースしており、 それによれば、本業の鉄道運輸収入については766億円と、1997年度以来の水準を確保している。これは、バブル崩壊前後にほぼ近い実績で、JR北海道38年の歴史の中で4番目に高い。ちなみにJR北海道としての最高は、1996年の800億円である。
一方で、鉄道事業にかかる費用は、昨今の物価上昇や、人件費・修繕費などの増加により、こちらも増加している。結果、営業利益は前年度から7億円改善したものの、567億円の赤字となり、経営安定基金運用益や国からの支援でそれを埋めている図式は変わらない。
今回発表された線区別の利用状況と照らし合わせてみると、非常に興味深い。2020年初頭の新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、JR北海道に限らず、鉄道会社は大幅な旅客減に見舞われた。その後の行動様式の変化や、2023年5月の5類移行により回復傾向は顕著となり、このところの円安水準によるインバウンド需要も、私たちの日常生活にとって良いか悪いかは別として、目に見える形で拡大している。
けれども、旅客輸送量は、コロナ前の2018年度の水準まで回復していない。これはJR北海道に限ったことではなく、世間の景気動向に大きく影響を受ける東海道新幹線においても、2025年の輸送人キロは2018年度比98%にとどまっている。
JR北海道の場合、2018年度と比較して輸送密度が大きくなっているのは、千歳線・室蘭本線(白石-苫小牧 102%)、根室本線(滝川-富良野 109%)のみである。もともとの分母が小さい根室本線を別にすると、インバウンド増加に対応した快速「エアポート」の拡充や、北広島市への「エスコンフィールド」来場者輸送などの恩恵を受けた千歳線以外は、軒並み減少している。特急列車が頻発する区間や、札幌都市圏であっても、2018年度との比較で86~95%程度、JR北海道全体では96%の実績である。
それでも鉄道運輸収入が2018年度より増加しているのは、2019年以降の運賃改定や、いわゆる「おトクなきっぷ」の見直しや「えきねっと」への誘導策が一定の効果を上げ、旅客単価が上昇したことが背景にあると考えられる。紙ベースの割引きっぷが大幅に縮小されたことには賛否両論が噴出していたが、ネット限定の割引きっぷの設定などによる一定の利便性は確保されており、効率化を追求していく中ではやむを得ない側面もある。2024年3月のダイヤ改正で、「北斗」「おおぞら」「とかち」などの特急列車から自由席をなくした措置も要因としてはあるだろう。
特急の全車指定席化は、今年度中にJR北海道の全特急列車に拡大される。少し前までは、特急列車に自由席があるのは当たり前と思われていたが、歴史を紐解けば、元来、優等列車である特急は全席指定が基本であった。特急列車に自由席が導入されたのは、新幹線「こだま」が最初だったとされ、自由席本位だった急行列車の格上げによる「エル特急」がその方向性を決定づけた。
私は個人的に、特急料金には速達性の他に快適性の対価という性質もあると思っているので、車内の平穏が確保されるのであれば全車指定席に異論はない。「実質値上げ」と批判を浴びもしたが、「えきねっと」を利用すれば、実質的に自由席利用と大差ない金額となることもある。
要するに問題は、コロナによる行動制約がなくなり、インバウンド需要がこれほど爆発しても、コロナ前の利用者数が回復していないという、その根本の部分にある。行動変容の問題ももちろんあるだろうが、少子高齢化が通学輸送に依存するローカル線にとどめを刺していった時代が終わり、今後は就労人口の減少や根本的な人口減少により、幹線輸送の分野にまでそれが及んできていると見ることができる。インバウンドをはじめとする観光需要でそれをカバーできる路線・線区は残念ながらすべてではない。
言うまでもないが、鉄道の存続は、それを必要とする利用客があって初めて語られる。貨物の問題も同様である。全体的な移動需要は縮小傾向にあっても、複数の輸送手段が競合的に存在しているところもある。けれどもその恩恵を享受できるのは都市部の住民だけである。
バスのドライバーの絶対数が不足する中、都市間高速バスの維持が困難になっている地域も出始めている。一方では、収益性の高い都市間高速バスに運転手を集中させ、路線バスの廃止や再編、減便を進めている会社もある。交通機関同士の有機的な結合を抜本的に論じなければ、問題は解決しないように思う。
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コメント
「交通機関同士の有機的な結合を抜本的に論じなければ、問題は解決しないように思う」
同感です。
乗客を取り合っている場合ではないですよね。
投稿: キハ58 | 2025/07/15 15:51
キハ58さん、いつもありがとうございます。
札幌市内では、地下鉄と並行する路線バスの系統の廃止や間引きが相当進んでいます。鉄道・バスにはそれぞれ得意な分野があるはずで、全体のキャパや動かす人手が減っている現状では、多少国や自治体の予算を投入してでも、棲み分けが必要なのではないかと、このところずっと考えています。
投稿: いかさま | 2025/07/28 00:28