1995年・最後の長い汽車旅【24】島原半島から福岡へ
前回の続き。
島原外港からは、島原観光汽船の高速船に乗って三池港を目指す。この航路は、1997年に島原鉄道が譲受して直営事業として運航していたが、旅客減少による経営難から2015年にやまさ海運(軍艦島クルーズを運営している会社)に譲渡したものの、新型コロナウィルスの影響による旅客大幅減からの回復が見込めず、今年7月から運航休止となった。1995年当時、三池、熊本、三角と3方面へのフェリーが出ていた島原港に残るのは、2社合わせて最大17往復の熊本航路だけになっている。
15時30分発、三池港行き島原観光汽船は、前向きの座席がずらりと並んだ高速船。出入口を挟んで前部が喫煙可能な席になっており、そちらに陣取る。喫煙席の客は自分も含めてたった2人である。15時20分に到着した三池港からは、観光バスタイプの西鉄バスで大牟田駅へ向かう。
切符のルート通りなら、ここから熊本方面へ向かうが、西鉄大牟田線(現:天神大牟田線)をはじめ、未乗の私鉄路線が多く残っているこのあたりの路線に顔を出しつつ博多までいったん戻ることにする。
大牟田駅で西鉄電車の無料時刻表を入手した。西鉄が駅で配布している時刻表は、発着時刻が並んだ一般的なものではなく、「ダイヤグラム」と呼ばれる、いわゆる列車の「スジ」が表されたものである。これが一般の客向けに配布されているのは非常に珍しい。デジタル化の進展により、駅での無料配布は終了したようだが、西鉄では現在も有料で同様の時刻表を発行していると聞く。大牟田線は、大手私鉄の幹線としては珍しく、西鉄久留米以南の区間で複線と単線が混在しており、その割に毎時4~8往復と列車本数が多いから、行き違いや追い抜きの様子をこのダイヤグラムとにらめっこしながら眺めるとわかりやすく、面白い。
16時53分発、西鉄福岡(現:西鉄福岡(天神))行き特急に乗る。西鉄には転換クロスシートを備えた特急用車両があるが、この列車はロングシートの通勤型電車での運用である。大牟田からしばらくの間は複線区間で、この間に大牟田行の特急とすれ違う。向こうは白い車体に赤い帯を巻いた特急用車両である。いささか羨ましい。続けて普通ともすれ違う。複線区間が終了する開で、先行の普通を追い抜き、単線区間に入る。途中の中島信号場・西鉄柳川で普通と行き違い、蒲池と大溝の間の一部複線区間で特急とすれ違う。再び単線に戻って試験場前(現:聖マリア病院前)で普通と交換と実に目まぐるしい。手品のようである。
試験場前から先は複線となり、17時22分着の西鉄久留米で後続の普通に乗り換えて西鉄小郡で下車。電車を降りた客が列をなして移動する流れに乗ると、ほんの1、2分で甘木鉄道の小郡駅に着いた。JR鹿児島本線の基山から小郡を経て甘木を結ぶ甘木鉄道は、第1次特定地方交通線の国鉄甘木線を前身とする第三セクター鉄道である。やって来た列車は小さなレールバスだが、通勤・通学帰りの乗客が満載の盛況である。
国鉄甘木線の1977年度~79年度の輸送密度は653人/km/日と、特定地方交通線の中でも少ない方で、国鉄時代は1日わずか8往復の運転だった。甘木鉄道に転換された際、運転本数は一気に4倍の32往復に増やし、西鉄小郡から600mほど離れていた筑後小郡駅を移転させて西鉄との乗り換えの便を図るなどの施策を打った。った。この結果、2019年度実績で輸送密度は2,026人/km/日とほぼ3倍になり、運転本数は平日ベースで42往復まで増えている。赤字額も比較的少なく推移している。福岡近郊ということもあり、もともと需要のある地域だったはずなのだが、それにしても何の施策もなく、赤字だからといって簡単に廃止対象に挙げてしまった国鉄の対応のまずさが窺われる。
終点の甘木へは18時10分着。甘木からはもう1本、西鉄甘木線が久留米方面に向かって伸びている。西鉄の甘木駅は踏切を渡って100mほどのところにある。西鉄甘木線の列車本数は、全線を直通する列車で37往復、昼間は綺麗な30分ヘッドダイヤになっている。運転本数は互角だが、運賃の安さもあり、乗降客数は今も西鉄の方が甘木鉄道の倍ほどと優位に立っている。18時30分発の花畑行き電車は2両編成のワンマン列車である。すでに日はとっぷりと暮れており、窓の外の景色は見えない。
19時02分、大牟田線との接続駅、宮の陣に到着。先行する福岡からの各駅停車に乗り換えて西鉄久留米まで運ばれた。ここからJR久留米駅まで歩こうと試みたが、距離・方向ともにはっきりせず、途中でタクシーを拾った。料金は600円。後で調べると、西鉄久留米駅とJR久留米駅は2km以上離れていた。歩けない距離ではなかったとも思うが、スマホもない時代、地図も持っておらず、無計画ではいかんともしがたい。
久留米発19時53分の快速電車で基山まで移動し、甘木鉄道に乗り換えて小郡で下車。甘木鉄道の完乗を果たし、先ほどとは逆のルートで西鉄小郡駅へ戻り、急行電車で西鉄福岡へ向かった。
今日はこの後、博多発23時59分の西鹿児島行き特急「ドリームつばめ」を仮の宿に定めている。「天神あたりでもうまいラーメンは食えるよ」と誰かが言っていたのを思い出し、西鉄福岡駅近くの屋台で1杯450円のラーメンをすすった。時刻はまだ21時過ぎで、「ドリームつばめ」までは時間がある。天神の交番でコインランドリーの所在を尋ねると、3人の警官が顔を突き合わせて相談し、歩いて15分ほどのところにあるコインランドリーを紹介してくれた。そこで1時間ほどかけて洗濯し、やや生乾きの洗濯物を鞄に突っ込み、タクシーを拾ってJR博多駅へ移動した。話し好きな個人タクシーの運転手は、昭和36年まで札幌の自衛隊にいたとのことで、短い時間ながら会話が弾んだ。
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コメント
大牟田駅でダイヤグラムを配っていたなんて、凄いですね!
甘木は仕事で訪問したことがあります。
甘木鉄道になってからで、結構がんばっている3セクな印象でした^^
投稿: キハ58 | 2025/10/21 14:59
キハ58さん、ありがとうございます。
私のような人種からするとこういう時刻表はたまらない感じになりますが、一般の人がこれを見ても面食らうのではないだろうかと思います。
甘木鉄道については私も全く同感です。数字を見る限り、今もなお一定の実績を残しているようで、このポテンシャルを活かせなかった国鉄は残念だなあと思います。
投稿: いかさま | 2025/10/26 23:37