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2026/05/11

2025年秋 夫婦勤続25周年の旅【5】「伊予灘ものがたり」の物語(その1)

 11月9日、日曜日は、朝から強い雨音で目が覚めた。窓の外は薄暗い。雨は昼過ぎまで続く予報になっており、これから松山へ向けて乗車する特急「伊予灘ものがたり」の車窓は望み薄である。


 特急「伊予灘ものがたり」は私の持ち込み企画であるが、今回の旅の趣旨からして、私の独断で決めたものではない。
 これまで私との旅で、嫁が乗ったことのある観光列車といえば、22年前、九州での「ゆふいんの森」くらいで、亭主に付き合わされるときは普段使いの普通な列車が多い。「列車で旅しよう」というだけで嫌な顔をするのはそういう理由があるためである。


 よってこの提案は行程決定のためのジャブのようなもので、断られれば別の行程を考えればいい、程度の気持ちだったのだが、嫁は私の案に反して興味を示した様子である。これが軸になって伊予大洲へ足を伸ばすことになり、全体行程が鉄道中心の移動になったといっていい。


 朝10時のチェックアウトぎりぎりまでホテルに滞在して、雨脚の強い中伊予大洲駅へ歩く。土産物など見ながら時間を潰すうちに少しずつ降り方は弱くなってきた。とはいえ、列車に乗っている間にすっきり晴れるとも思えないので、伊予灘の絶景はお預けの様相である。
 駅の待合室には観光客風の客が10人以上も待っている。10時29分に伊予長浜経由の松山行き普通列車、10時35分に松山行きの特急「宇和海10号」があり、前者は松山12時02分着、後者は11時19分着だが、ホームに上がる気配も見せない。皆、松山着13時03分と最も鈍足な「伊予灘ものがたり」を待っている。


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 10時25分頃にホームへ出て、小雨の中立っていると、ほどなく松山からの「伊予灘ものがたり」が、赤い車両を先頭にホームに入って来た。3両編成の列車は、2両が赤、最後尾の1両が黄色に塗られている。JR四国発足直前に国鉄が投入したキハ185系が種車である。JR四国からJR九州に移ったキハ185形がコーポレートカラーの赤に塗り換えられていて、いくらかの既視感があるが、こちらの赤の方が少し深みがあり、細くあしらわれたゴールドのラインがそれを引き締めている。「伊予灘ものがたり」の到着と入れ違いに、松山行きの普通列車が10人ほどの客を乗せて出発していった。


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 松山から「大洲編」と称してやって来た「伊予灘ものがたり」から下車してきた乗客が、満足げに、そして名残惜し気にホームを後にしていく中、列車の中では折り返しの準備が進められている。ホームでは乗務員が、これから「双海編」として新たに迎える乗客のシャッターを押すなど、すでにサービスに余念がない。「大洲城」の幟を持った甲冑姿の人が、観光客に囲まれている。よく見ると昨日、大洲城で見かけた人である。地元自治体も巻き込んだ「おもてなし」の精神がすでに垣間見える光景であるが、その本領は列車が発車してからであった。


 続く。



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コメント

後編と併せて拝読。
乗車したことはなく、友近礼二妄想旅他で観た内容に加えての旅行記で、本当に妄想できました。
観光列車のベスト3の常連ということがよくわかります^^

投稿: キハ58 | 2026/05/24 14:43

キハ58さん、いつもありがとうございます。
この列車の魅力は、車両・車窓・おもてなしが揃っていることに加えて、ツアーやパックだけではなく、グリーン料金を奮発すれば利用できる気軽さにもあるのではないかと思います。早くから指定券を押さえておく必要はありそうですが、「手の届く観光列車」という感じで好印象でした。

投稿: いかさま | 2026/05/31 23:25

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