西村京太郎氏を悼む
前回に引き続き、公私そして雪の相手で忙しい日々を送っている。
なかなか休日にパソコンに向かう気力が生まれず、次回も雪の話だなあ、と思って細々と準備を進めていたところへ、西村京太郎氏が亡くなったというニュースが飛び込んできた。
鉄道好きの私にとっては、西村京太郎氏のトラベルミステリーは私を鉄道の世界の深みに誘い込んだ素材のひとつである。このあたりについては、以前にも詳しく書いたので、多少重複する部分もあるとは思うが思い出を綴る。
本棚:西村京太郎の世界 その1 ・ その2 ・ その3
1979年の「寝台特急殺人事件」を嚆矢とする西村氏のトラベルミステリーに私が最初に触れたのは、1982年刊行の「特急さくら殺人事件」である。ちょうどこの時期から十津川警部シリーズのトラベルミステリーは加速度的に刊行されるようになる。年間10~15冊、多い年には20冊近くの作品を書き下ろし、積み重ねたオリジナル書籍は630冊を超えるという。90歳に達してなおそのペースが衰えることがなかったというのは驚くべきである。雪との格闘を理由にブログすら書かなくなった私とはひどい違いである。
だが大量生産に私の読書ペースが追い付かなくなったことや、ややパターンが固定化してきたことに飽きてきたこともあり、急速にトラベルミステリーの読書量を減らしていった。
その一方で私は、トラベルミステリーを書く以前の西村氏の作品をよく読むようになった。以前の記事で私の好きな作品ベスト3に挙げた「D機関情報」をはじめ、聾唖者問題を扱った「四つの終止符」などの初期の社会派作品、十津川警部の初登場作である「赤い帆船」「消えたタンカー」などの海洋もの、明智小五郎、エルキュール・ポワロ、エラリー・クイーン、メグレ警部を主人公とするパロディ小説など、この頃までの作品は非常に幅広く、非常に丁寧な作りで読み応えのある印象である。
日本のミステリー界を大きく変え、またリードした作家でもあり、私にとっては鉄道への深い造詣と飽くなき読書欲を高めてくれた人である。享年91歳。謹んでお悔やみを申し上げるとともに、心からお礼を申し上げたい、と思う。
ところで、私が以前に西村京太郎氏に関する記事を書いたのは、2012年8月から9月にかけてである。実は今年2月は、私がこのブログ「いかさまトラベラー」を始めてちょうど10周年の節目であった。にもかかわらず、忙しさにかまけて1か月でたった1回しか記事を書かなかったとは恥ずかしい限りであるが、ここまで続けてくることができた。いろんな思いについては次回少し時間をいただいて綴ってみたいと思うが、取り急ぎ、ここまでお付き合いいただき、時に暖かいメッセージ・コメントをいただいた皆さんにお礼を申し上げたい。
ありがとうございました。また、これからもよろしくお願いします。
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