フリーきっぷの残り滓〜あてのない小さな旅
先日、道内某都市へ出張に行った際、「HOKKAIDO LOVE 6日間周遊パス」を利用した。特急を含めたJR北海道の在来線全線が6日間乗り放題で、国の補助を受けて12,000円。出張だけで元は取れているのだが、有効期限は明日、22日まである。どこへ行くあてもないのだが、使わずに流してしまうのもいささか勿体ない。
日付が変わったので昨日になるが、21日、札幌10時ちょうど発の旭川行き特急「ライラック」に乗った。何のあてもない時は,選択肢が多い方向に向かうに限る。この方面であれば、岩見沢から室蘭本線、滝川から根室本線、深川から留萌本線、さらに旭川では3方向の選択肢がある。このうち根室本線、留萌本線方面は、2年前、似たような状況下で乗りに出掛けた記憶がある。いろいろ考えたが、結局最後まで乗り通し、11時28分、3分遅れて旭川駅の4番ホームに到着した。
旭川からの選択肢は、名寄方面の宗谷本線、上川方面の石北本線、そして富良野線である。どの方向へも比較的接続はよいが、1時間ほど後の稚内行き特急「サロベツ1号」が、観光用車両のキハ261系「はまなす編成」で運転されるという情報を得て、目標を宗谷本線に定めた。
離れた6番ホームに、新鋭ローカル気動車、H100系が停まっているのが見えた。11時31分発の名寄行き普通列車だとわかり、衝動的に乗車。ブラックフェイスが近代的な小さな車両である。初登場は2018年、この区間への投入は昨年からだが、乗るのは初めてである。2人用と4人用のボックスシートにロングシートを組み合わせた車内は4割ほどの乗車率である。比較的近郊の利用が多いという予想は外れ、永山、比布など市街地での乗降も少ない。
蘭留を出ると塩狩峠にかかる。見た目にも線路の勾配はきつくなるが、キハ40系が激しく唸りながら登った峠道を、馬力・加速度・最高速度いずれも改善された新型気動車は淡々と登っていく。3年前の時刻表と比べると、この列車の旭川-名寄間の所要時間は16分短縮されている。
ややスピードを落として右に左にカーブを切り、ほどなく下りに差し掛かって塩狩着。線路敷にはうっすらと雪が残っている。車で立ち寄ったことはあるが、列車で途中下車したことはない。いずれ降りてみたいと思うものの、今日も車内からホームを眺めるだけで素通りである。
13時14分着の和寒で下車。駅構内を跨ぐ歩道橋を渡って8分ほど歩いたところにある「大勝食堂」へ。ここは20代後半と40代前半の旭川時代、仕事の途中によく立ち寄ったラーメン屋である。魚系のダシの匂いが立ち込める昭和然とした食堂で、経営者は何度か代わっているが、味は健在。20年前は500円でメニューは醤油ラーメンとライスのみだったが、値段が700円に上がった代わりに、塩・味噌もラインナップに加わっている。定番の醤油ラーメンで体を温めて、駅へ戻る。
和寒14時04分発の特急「サロベツ1号」は、情報に反してキハ261系の通常編成。2日前の悪天候による運休などでダイヤが変わったらしい。乗ったことのない車両に巡り合えるとなれば、どちらかと言えば郷愁列車派の私とてワクワクする。その機会を逃したとなれば残念である。
しかも追い打ちをかけるように、名寄での折り返し時間にカツ丼を食べようと思っていた駅前の食堂は、「サロベツ1号」が到着した14時30分から昼休憩で「準備中」の札。和寒でラーメンを食べているから空腹にさいなまれることはないが、旭川を出たあたりから「名寄のカツ丼」が脳内を支配しつつあったので、これまたやるせない気分になる。
結局、私は15時48分発の旭川行き特急「サロベツ4号」を待つことなく、14時44分発の快速「なよろ8号」で旭川へ引き返した。行きと同じH100系1両の列車は、車番をよく見ると旭川から乗った普通列車と全く同じ車両だった。旭川からは16時発の「カムイ32号」指定席。このところ「ライラック」に当たることが多かったので、掛け心地のよい「カムイ」の指定席は実に快適だった。ちなみにこの列車、岩見沢から札幌へ向かってのラストスパート中に鹿をはねて緊急停止。札幌着はおよそ30分遅れた17時55分頃であった。
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