JR北海道経営問題

2020/10/25

コロナ下のJR北海道【3】日高本線(鵡川~様似)の廃止決定へ

 鉄道輸送の需要が落ち込み、鉄道会社の収支が軒並み悪化するなかで、喫緊の課題は支出の抑制を図ることである。とはいえ、先にも述べた通り、インフラを自身で所有しなければならない鉄道においては固定費の比率が高く、コスト削減にも限界がある。

 
 そうした中でJR北海道においては、数年来取り組まれてきたいわゆる「赤色線区」の今後をめぐる動きがにわかに加速し始めた。
 10月23日、日高本線・鵡川~様似(116.0km)の沿線7町長は、同区間廃止の同意書に署名し、JR北海道の島田修社長に提出した。これにより、同区間は2021年4月1日付で廃止、バス転換することが正式に決定した。 
8月12日、日高本線・鵡川~様似間の沿線7町長が臨時町長会議を開き、同区間の復旧を断念、来年3月末の正式廃止に向けてJRとの最終合意を図る方針と報じられた。

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 2015年1月、高波による土砂流出被害を受けた日高本線は、その後一部区間で一時運転を再開したものの、土砂流出の進行により同年3月以降、鵡川~様似間の運休が続いた。年間10億円を超える赤字を生むこの区間の復旧には護岸対策を含めて38億円の費用が掛かるとされ、早期復旧を求める沿線自治体と復旧に消極的なJR北海道の溝は埋まらなかった。2016年秋にJR北海道はこの区間を「維持困難線区」と位置付け、2018年2月の「鉄道ネットワークワーキングチーム・フォローアップ会議」でも5段階評価の中で2番目に厳しい「他の交通機関との代替も含め、地域における検討・協議を進めていく」区間とされた。


 この間、2016年秋には「沿線自治体が廃止容認」と報じられたが、現実には代替交通機関の確保、あるいは比較的被害の少なかった鵡川~日高門別間の扱いをめぐって沿線自治体の意向は必ずしも一枚岩となっておらず、終盤には鵡川~様似間の廃止を容認する6自治体とあくまで鉄道での復旧を主張する浦河町とが対立する図式にもなった。


 浦河町も含めた沿線7自治体がようやく廃止に向けた協議に入ることになった背景には、新型コロナウィルスの影響も加えてJR北海道の収支が著しく悪化する中、議論を先延ばししては、代替交通機関の確保に向けた条件の引き出しに黄信号が灯る可能性も見据えたのではないかと推察される。JR北海道は今年6月の段階で、代行バスの運行費用や施設整備費用として総額25億円の助成金を拠出する案を提示したと報じられており、今回の合意はこの内容が基本になった。25億円は向こう18年間の代替バスの運行費と地域振興費に充てられ、この他に通学定期代の値上がり分の補償や、護岸復旧や線路敷の安全確保策なども講じられる。


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 日高本線・鵡川~様似間の廃止決定で、いわゆる「赤色線区」は残り2区間となった。留萌本線については8月18日、沿線4自治体が一部区間廃止で合意し、JR北海道との協議に入ると報じられた。全線廃止やむなしとする留萌市・秩父別町に対し、鉄路の存続を求める深川市・沼田町という図式になっており、双方の折衷案となった格好である。具体的な廃止区間については示されていないが、通学生などの需要が見込まれる深川~石狩沼田間を鉄道として存続させる考え方だとみられる。一方でJR北海道は全線廃止に向けた姿勢を崩しておらず、この内容で合意に到達する可能性は乏しい。


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 日高本線同様、一部区間で災害運休が続く根室本線・富良野~新得間については現段階で目立った動きは見られないが、新型コロナウィルスによる経営への影響が深刻化するJR北海道としては結論を急ぐ構えである。鉄路の維持を求める自治体の姿勢は理解できないわけではないが、たった1年間、たったひとつの出来事が、鉄道のみならず交通機関全体を取り巻く現況を大きく変えてしまった。そのことを考えた時、鉄路を守るの一点張りでは、大局的に見て守るべきものも守れないという事態にもなりかねない。維持困難路線の問題は正念場を迎えている。



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2020/10/18

コロナ下のJR北海道【2】来春減便ダイヤ改正へ

 JR北海道は14日、来春のダイヤ改正に合わせて、列車の減便・臨時列車化をおこなうことを発表した。


 JR北海道は新型コロナウィルスの影響で大幅減収が続いており、同日の島田社長の記者会見によると、2020年度のJR北海道単体の減収見通しは400億円に上り、うち360億円が鉄道運輸収入とのこと。2019年度の鉄道運輸収入は706億円であったから、前年比49%である。島田社長は、「発足以来の厳しい状況で、ダイヤの見直しや設備などの固定費削減に踏み込まざるを得ない」と述べている(北海道新聞)。減便・臨時列車化はその一環である。

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 今回の減便・臨時化については、対象が特急列車から普通列車に至るまで幅広く、これまで減便に縁のなかった札幌圏にも及んでいることが特色である。
 都市間輸送では、札幌~函館間で1往復減便・1往復臨時化、札幌~旭川間で2往復臨時化、旭川~網走間で2往復臨時化、旭川~稚内間で1往復臨時化となる。臨時化と言っても、年間230日程度運休、すなわち土休日中心の運転となる旭川方面の2往復を除けば、函館方面と稚内方面で年間30日程度、網走方面で50日程度と、運休日数はそれほど多くない。函館方面と合わせて、運転本数に変更のない帯広・釧路方面では、基本編成両数が減らされ、5両編成となる。


 札幌圏では平日10本程度、土休日20本程度が減便となる。減便対象には今年のダイヤ改正で増発された快速「エアポート」も含まれている。「エアポート」の減便はコロナの感染拡大の著しかった今年春にも実施されていたが、運行間隔が11分~13分と不定になったところへ減便が重なったことで運転列車の把握が難しくなった。個人的には元の15分間隔、毎時4往復に戻してもよいように思うのだが、どのようなダイヤ構成になるのかは気になるところである。

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 札幌圏以外では、函館本線(滝川~旭川)、宗谷本線(旭川~名寄)、根室本線(滝川~新得・新得~帯広)、留萌本線、石北本線が減便の対象となっており、各線とも10本程度が減便となる。一律に実施されるのかどうかは不明だし、線区によっては区間運転の列車が多数運転されているところもあるが、例えば滝川~旭川間や留萌本線の該当区間で10本減便となると、運転本数は1日4~5往復となる。これはかなりの大ナタである。


 これらのダイヤ改正によるコスト削減効果は約5億5千万円とされている。JR北海道の2019年度の営業費用は1,397億円で、わずか0.4%に過ぎず、焼け石に水ともいえる金額でしかない。けれども、テレワークの拡大による通勤需要の縮小、WEB会議の急激な普及による出張・ビジネス需要の減退、そしてこれまでJR北海道の旅客需要の底上げに大きな影響を与えていたインバウンド需要の減退など、コロナの影響を受けた旅客流動の劇的な変化は、利便性の確保や改善によってはもはや需要の回復が見込めないという判断をJR北海道にさせたということができる。JR北海道の運行路線の中で唯一収支均衡に近い成績を上げていた札幌圏輸送が一転して社内最大の赤字を出す状況になっていることは、会社運営に大きな影を落とすことは必至である。



 JR北海道で一大需要を誇る札幌圏と都市間輸送に大きなメスが入る一方で、これまで赤字の元凶とされてきた地方の閑散路線における路線維持方策に関する動きが停滞していることに対しては、利用者の間でいくらか不満がくすぶっているとも報じられた。そのあたりが札幌圏以外の減便にもつながっているのだろうと思うが、バス転換を求められているいわゆる「赤線区間」においてもこのところ動きが出始めた。そのあたりについては、次回。



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2020/09/26

コロナ下のJR北海道【1】

 新型コロナウィルスの感染拡大は、3月以降、外出に関する制限が出されたことで、主な交通機関に大きな影響を及ぼしている。通勤・通学列車はコロナ前と比較していくらか空いている実感が得られる程度だが、顕著なのは都市間を結ぶ列車やバス、飛行機などである。私は先月初旬に仕事で函館へ往復したのだが、新幹線と結んで混雑するはずの函館本線の特急「北斗」の乗車率は終始3割ほどであった。


 鉄道会社はいずこも新型コロナウィルスの影響を大きく受けている。JR各社の2019年度の決算は各社とも減収減益となった。8月に発表された2020年度第一四半期の状況では軒並み赤字で、あのJR東海すら836億円の営業赤字となった。前年同期は2,063億円の黒字(これもとんでもない数字だが)から一気の暗転である。JR東海の旅客営業収入は9割以上が新幹線だが、その稼ぎ頭の第1四半期の乗客数が前年比16%ではいかんともしがたい。


 JR北海道も状況は同様である。2019年度の連結経常利益は前年マイナス24億円の135億円の赤字と過去最大を記録した。鉄道運輸収入は第3四半期までの利用客の増加、10月1日の運賃改定、全般的なコスト低減による改善分、25億円を、第4四半期だけで食い尽くして通年では前年比5億円のマイナスとなった。新型コロナによる影響額は鉄道事業関連だけで42億円に上るとされている。JR北海道の年間の鉄道運輸収入の5%に相当する。


 全国的な緊急事態宣言の影響を受けた2020年度第1四半期は、3線区を除きほぼすべての路線で営業損益が前年同期から大幅に悪化している。ちなみに改善した3線区とは根室本線・富良野~新得、留萌本線と札沼線(北海道医療大学~新十津川。4月廃止)という、いわゆる「赤色線区」ばかりだから話にならない。例年赤字額の筆頭である北海道新幹線は前年同期比15億円悪化の約35億円の赤字。輸送密度が前年同期の1割にも満たないのだから仕方がない。524人/km/日の輸送密度は日高本線・苫小牧~鵡川間とほぼ同等である


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 だがこの四半期で収支の足を最も引っ張っているのは札幌圏である。札沼線・函館本線の輸送密度は53~56%、インバウンド客減少の影響をもろに受ける千歳線は前年比40%と悲惨な状況で、前年ほぼトントンだった収支は約55億円の赤字と北海道新幹線を超える。JR北海道全体の営業損益が219億円の赤字だから、札幌圏はその4分の1を占めている計算になる。


 コロナ下で「密」な環境をなるべく回避しなければならない状況の中、テレワークなどへの対応も進んで特に通勤列車の混雑が緩和されているというのは利用者側からすればありがたい話ではあるが、運賃・料金収入を得て旅客を運んでなんぼの鉄道会社にとっては経営の根幹を揺るがす事態である。JR北海道の島田社長は9月16日の定例記者会見で、上半期の旅客運輸収入が前年同期比で約200億円の減少となる見通しを示した。前年同期比半減に近い数字である。


 JR北海道は、北海道独自の緊急事態宣言を受けて、全国に先駆けて3月23日から特急列車の減便・減車を実施し、3月ダイヤ改正で毎時5往復に増発したばかりの快速「エアポート」についても5月16日から増発分の運休に踏み切った(7月1日以降通常運転に復帰)。利用客の減少度合いから考えれば供給過剰ではあるが、旅客の移動の実態や利便性を考慮すれば、利用客が半減したからと言って本数を半分にできるわけではない。おまけに軌道から車両まで自前の鉄道会社はそれだけで日々固定費を必要とする。第1四半期の実績では、旅客営業収入119億円の減少に対し、費用は16億円の減少にとどまっている。


 JR北海道では2018年以来、赤字額が高水準にある環境下で早ければ2022年度に運転資金が枯渇すると言われている。国は鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの貸付資金の2020年度分返済額、約29億円の返済を1年間猶予する方針であることが、先ごろ地元新聞で報じられた。一時的にJR北海道の収支に寄与することは間違いないだろうが、問題はそのあとである。返済猶予はすなわち問題の1年先送りに他ならない。コロナの影響がいつまで続くかは不 透明な状況であり、仮に終息したとしても、本州ほどではないが札幌の主要企業でもテレワークは拡大傾向にあり、輸送実績が元の数値に戻る保証はない。鉄道をはじめとする交通機関の今後の在り方が問われる状況になっている。




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2018/12/25

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【9】札沼線末端区間廃止決定とJR北海道の現況

Photo  JR北海道は12月21日、札沼線・北海道医療大学-新十津川、47.6kmの廃止を届け出た。同区間は2020年5月7日をもって廃止となることが決定した。JR北海道の閑散区間廃止では、石勝線支線(新夕張-夕張)に次ぐ決定である。


 以前の記事の中でも触れた、JR北海道の2017年度の線区別収支と利用状況によると、この区間の輸送密度は前年度からさらに9人減の57人/km/日と、各区間の中ではぶっちぎりの最下位である。営業費用の減少と区分の見直しにより、営業損益は若干改善したものの、3億1,400万円の赤字となっている。


 この区間に対し、JR北海道は代替交通機関の整備と損失補てんのために、総額約18億円の支援をおこなう。鉄道運営の赤字の6年分に相当する金額で、うち約15億円は今後20年間にわたって支出される。この数字は沿線自治体にとっては「満額回答」ともいえる回答だが、その一方で支援する側のJR北海道は、国からの財政支援を受けてなお、2022年には資金ショートに陥るとされており、何とも不思議というか、アンバランスな話である。


 ちなみに、JR北海道全体での輸送密度は、2016年度と比較して79人減の5,122人/km/日となった。線区別にみると、札幌を中心とする4方向(札幌-苫小牧、岩見沢、北海道医療大学、小樽)の近郊輸送がいずれも前年を上回っている。また、石勝線・根室本線(南千歳-帯広)、根室本線(滝川-富良野)、富良野線が前年を上回っている。これらは、前者の場合は一昨年の災害による長期運休の影響からの回復、後者はインバウンド需要増加の影響によるところが大きいのではないかと思う。


 これ以外の路線は軒並み前年から輸送密度は減少している。北海道新幹線が前年比2割減となったことは前にも書いたが、この影響を受けた函館本線・室蘭本線などの接続線区にも大きな影響を与えている。このこと自体は予想されたことではあるが、どうにも腑に落ちないのが、存廃問題を突きつけられた13区間のうち、先に挙げた根室本線(滝川-富良野)と富良野線を除く11区間で軒並み低下していることである。


 11区間のうち3区間は、廃止が決定した札沼線(北海道医療大学-新十津川と、災害による運休、バス代行が続く根室本線(富良野-新得)、日高本線(鵡川-様似)である。いずれも輸送密度が200人/km/日を下回っており、置かれている状況そのものが、鉄道以外の手段による代替が可能だということを暗黙の裡に示している。


Dscn0029  問題はこれ以外の8区間である。宗谷本線(名寄-稚内)で約3%、石北本線(上川-網走)で約7%の減少は、合理化のための特急系統分割の影響も受けていると考えられるが、それ以外の区間も少ないところで約3%、留萌本線や根室本線(釧路-根室)に至っては3割以上の大幅減となっている。全体人口も、鉄道の主たる利用者である通学需要も減少傾向にある背景は理解できるが、それはそれとして減り過ぎである。存続に向けた地元の思いが伝わってこないように感じるのは私だけだろうか。


 先ごろ発表された2019年3月のJR北海道ダイヤ改正の概要では、北海道新幹線の青函トンネル部の速度向上により、東京-新函館北斗の最速所要時間が4時間を切ることになった。しかし、4分程度の短縮がシェアの引き上げ、収支改善につながるかどうかは疑わしい。函館市中心部まではアクセス列車に乗り換えて4時間半近くかかる状況は変わらず、札幌方面への接続も相変わらず悪い。降雪等による遅れの影響をほとんど受けない下り列車でも、乗り継ぎ時間は最短16分、最長では42分にもなる。「新幹線接続特急」とは言い難い。


Dscn1185  また、石勝線・追分-新夕張で、普通列車の半分を削減し、1日上下5本となる。比較的乗降の多い追分・新夕張に停車する特急を増加させることで一部をカバーするが、普通列車は通学等に絞った最小限の運転となる。この区間は3年前の普通列車大量削減の際にも対象となっており、3年前との比較で普通列車は3分の1になった。こうした区間が、今後ますます増えてくる可能性もある。


Dscn6266  鵡川以遠の災害運休が続く日高本線については、沿線7町長による協議会で、日高門別-様似間95.2kmの廃線を受け入れ、鵡川-日高門別間20.8kmについては、鉄道による復旧を引き続き求めていく方針で合意したと先日報じられた。
 しかし、のちに浦河町長が「あくまで全線の復旧を求めていく考え」と述べるなど、方向性は定まり切っていない。加えて、鵡川-日高門別では先日の地震の影響で線路設備に新たな損傷が確認された。この区間だけでも復旧には2年の工期と5億円の費用がかかるとされ、ハードルはさらに一段高くなった。


 札沼線が「満額回答」を得て廃止を受け入れたことは、これ以外の対象路線の交渉にも少なからず影響を与えると思われる。協議を引き延ばせば、それだけ経営が悪化するJR北海道の財布の紐が固くなる可能性も否定できない。それならばなるべく早く、と、沿線自治体が動き出す可能性もある。
 
沿線自治体もJR北海道も厳しい現実を突きつけられている。年が明ければ石勝線支線の廃止も迫る。引き続き今後の動きからは目が離せない。

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2018/10/21

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【8】札沼線末端区間、廃止へ

 10月13日付北海道新聞は、JR北海道が提案していた札沼線・北海道医療大学-新十津川(47.6km)の廃止・バス転換について、沿線4町長が受け入れることで合意したと報じた。正式な調印は年内におこなわれ、早ければ2019年内、遅くとも2020年3月までには廃止となる公算が高くなった。


 同区間の近況については、以前の記事にまとめてあるのでそちらを参照願いたい。

 ⇒「JR北海道『維持困難線区』は何処へ【3】札沼線末端区間

Sassho 記事によると、同区間を廃止する見返りとしてJR北海道から提示された条件は、代替バスの運行に係る自治体負担額の20年間交付、鉄道用地の無償譲渡、北海道医療大学駅バスターミナルの整備、これに加えて存続区間である札幌-北海道医療大学の直通列車の運転本数大幅増などとなっている。代替バス運行支援の内容は、先に廃止が決定した石勝線夕張支線とほぼ同等である。


 この区間の廃止は、JR北海道の維持困難線区としては、複数の市町村にまたがる路線では初のケースとなる。当別・月形・浦臼・新十津川の4町は、それぞれの町が抱える事情や旅客流動に差があり、全線通しての代替バスは設けられず、区間流動に函館本線の主要駅へのアクセスを組み合わせた体系になる見通しで、これまたレアケースである。


 また、当別町の場合は町域内での足を確保する必要がある一方で、存続区間である札幌方面への利便性を向上させたいという思惑もあったのだろう。4町の中で最後までJRとの協議がずれ込んでおり、結果として存続区間の運転本数の大幅増を勝ち取った。おそらくこうした状況の違いから、廃止の是非や見返り条件について4町の間で相応の温度差があったことは想像に難くない。


 今回の札沼線末端区間の廃止決定は、2月のフォローアップ会議で「他の交通機関との代替も含め」とされた留萌本線、日高本線(鵡川-様似)、根室本線(富良野-新得)の今後の動きにも影響を及ぼすのは間違いない。日高本線、根室本線については、11月をめどに方向性や路線の在り方を検討、協議するとなっており、留萌本線でも今後沿線自治体とJRが個別の意見交換をおこなう見通しである。


 深川市長、様似町長のコメントも載っており、いずれも「事情は違うし影響はない」とのコメントである。確かに「バス転換も視野に」とフォローアップ会議の報告段階から白旗モードの札沼線とは事情は違うが、一方で日高本線と根室本線は災害のため現時点で列車が走っていないという別の異なる事情も抱えている。いずれも輸送密度が200人に満たない線区であり、沿線自治体の方々には怒られるかもしれないが、札沼線の状況を横目で睨みながら、どこで条件交渉に持ち込んでいくかを伺っているように思える。


 JR北海道は、台風21号および北海道胆振東部地震による運休による減収を、9月中だけで14億円に上ると発表している。2017年度の決算は経常損失106億円と発足以来最悪の赤字となった。これに対し国は2か年総額400億円の支援措置を講じる。JR自身も来年10月に運賃値上げを実施し、約40億円の増収を見込む。


 それでもJR北海道は黒字化しない。5年後の収支予測では連結ベースでも43億円の当期純損失となるらしい。北海道新幹線の札幌延伸後には収支均衡を目指すとしているが、現段階ではその北海道新幹線が年間103億円の赤字を生み、経営の足かせとなっている。自治体はともかくとしてほぼ他人事のような道の温度感、先の見えない国の支援措置、値上げ検討の一方で割引拡大による目先の旅客獲得に走るJR。すべての動きが一体感を出せずにちぐはぐな感じを受けるのは私だけだろうか。

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2018/05/28

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【7】石北本線(その3)

 ここまでの内容はこちら。⇒その1 その2


Dscn6202  札幌・旭川と北見という10万都市を結ぶ都市間輸送、旭川・北見近郊の都市圏輸送を担いながら、利用は低迷し、さらに貨物輸送という問題を抱える石北本線。地形に阻まれて線形が悪いうえに、中間の人口が希薄、冬期間の除雪に多くの費用を要するというハンデの部分も含め、現在のJR北海道の路線が置かれている状況を非常によく象徴している路線であると言える。


 先述した国土交通省の全国幹線旅客純流動調査(2010年)で、札幌-北見間とほぼ等距離にある札幌-函館間の流動を見てみると、鉄道37.3%、航空3.3%、バス2.4%、自動車57.0%となっている。鉄道のシェアは1995年と比べて倍以上に増えている。JR北海道が「スーパー北斗」の運転を開始し、高速化と増発による攻勢に出た時期で、同じ時期に虻田洞爺湖から八雲まで順次高速道路が延伸されたにもかかわらず自動車のシェアが減少傾向にあることは興味深い。
 現時点では高速道路がさらに大沼公園まで延伸される一方、鉄道は当時と比べてスピードダウンしており、若干シェアが変動していると考えられるが、増発と高速化がシェア回復の切り札となることは間違いない。


 とはいえ、札幌-北見・網走間の総流動は1日5,000人にも満たないと考えられ、函館とはそもそものパイ自体が比較にならない。中間の沿線人口を考えても、函館方面と同等の投資をしてもそれに見合う効果は得られない。
 2000年に完成した宗谷本線・旭川-名寄間の高速化工事では、76.2kmに32億円(この他に特急用車両12両で21億円)が投じられ、同区間の最高速度は95km/hから130km/hに引き上げられた。現在は120km/hに抑えられているものの、ハイパワーのキハ261系が最速56分で結んでいる。投資効果としてはこの辺りが参考になるだろう。


 JR北海道の維持困難線区に対する直接的な支援には消極的な北海道だが、特急車両の導入については、宗谷本線高速化と同じ第三セクターを活用したリース方式による支援を表明している。あとは線路の改良だが、峻険な区間が多い石北本線では全線改良には多額の費用が掛かり、自治体の協力も得られまい。そこで比較的平坦な新旭川-上川と西留辺蘂-北見を部分的に高速化できないものか。この辺りまでで札幌-北見で20分程度の短縮は見込めそうである。


Sekihoku  それからもうひとつ、遠軽駅の移転とスイッチバックの解消を検討してはどうか。
 もともと旭川から北見方面に向かう路線は、名寄・紋別を経由して遠軽に達する、今は亡き名寄本線がメインルートであった。後から建設された石北本線は、そこに突っ込む形で遠軽に達している。遠軽駅が平坦地で他に分岐線もないにもかかわらず、不自然なスイッチバックになっているのはこのためである。これが解消されれば、最低でも5分程度、駅の位置によってはもう少し時間短縮効果がある。貨物列車の運行形態も改善される。
 スイッチバックを解消するためには最低でも1kmほど駅を移転させなければならず、遠軽町からは相当な反対があることも予想されるが、石北本線を今後も有効に活用していくために不可欠だと判断されればそれもやむを得ないのではないかと思う。


 こうした施策を積み重ねたとしても、札幌-北見間で、他の交通機関と比較して優位に立てる所要4時間に達するのは少々厳しいかもしれない。だが現状を放置すればジリ貧になることは目に見えている。旭川や北見の通学需要も、少子化が急速に進む現在、見通しは暗い。


2015081501  2016年3月、JR北海道は上川-網走間で普通列車の運転本数を削減するとともに、乗降客が極端に少ない4駅を廃止した。さらに将来に向けて、5つの駅と41か所の踏切を廃止する方向で検討を進めていると地元紙は報じている。
 鉄道を維持するためには、鉄道が本来の役割を果たせる部分に投資を集中し、機能が喪失した部分を思い切って合理化することも必要である。JR北海道本体に限った話ではなく、線区単位でも「選択と集中」という考え方は存在してしかるべきではないかと思う。


 いずれにしても、採算の取れない北海道の地方路線を維持していくためにはお金がかかる。それを民間たるJR北海道単独に負担させるのは理屈に合わない。それでも鉄道を、と声を上げるのならば、相応の負担は覚悟しなければならない。自治体か国かはこの際関係ない。
 高速道路の延伸工事は粛々と進んでいる。道路に突っ込む金があるが鉄道に突っ込む金はない、そう言うのならば、石北本線もさっさと廃止すればよい。大きな期待だけ背負わされながら、近代化から取り残され、日々1,000万円以上の赤字を垂れ流しながら肩身の狭い思いで走り続ける石北本線が気の毒である。



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2018/05/16

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【6】石北本線(その2)

 石北本線を巡るもうひとつの大きな問題は貨物列車の存在である。


 北海道の鉄道は、石炭をはじめとする貨物輸送と、地域の開発を目的として、人口希薄な地域にまで張り巡らされていった歴史を持つ。石炭が斜陽化する中、貨物輸送の柱となっていったのは農産物輸送である。今も農協の倉庫が駅の近くに並んでいるのはその名残である。
 モータリゼーションの進展により、農産物輸送における鉄道のウェイトは低くなった。国鉄分割民営化当時1,500kmを超えていたJR貨物の道内営業路線は、現在1,267.9kmと減っているが、それでも大量輸送が可能な交通機関としての鉄道貨物の役割はまだ大きい。その典型的な例が石北本線を走る通称「タマネギ列車」である。


 国内の玉葱生産量は2015年産でおよそ126万トンだが、その3分の2近くが北海道産。なかでも北見市を中心とする「JAきたみらい」だけでそのおよそ4割、30万トンあまりを全国に向けて出荷している。ピーク時の出荷量は1日1,000トンをはるかに超える
 輸送手段は6割がJRコンテナ、残り4割がトラック(多くは20tトレーラー)+フェリーである。トラック輸送は機動力と速達性においてJRを凌いでいるが、貯蔵性の高い玉葱においては、5t単位での納入が可能なJRコンテナの引き合いは強い。8月から4月にかけて、北見-札幌貨物ターミナルに「タマネギ列車」が設定されるのはこのためである。


 その一方で、JR貨物は2011年、この列車の廃止を打ち出した。理由は機関車の老朽化採算性の問題である。
 機関車の老朽問題は、当初線路規格の低い石北本線には新型ハイパワー機関車(DF200形)は走行できないとされていた故発生した問題であったが、試験運転の結果問題ないことが分かり、2014年以降正式に導入されて解消している。
 だが、ハイパワーのDF200形が投入されたにもかかわらず、タマネギ列車は遠軽でのスイッチバックが必要になる石北本線の特殊性から、「プッシュプル」と呼ばれる機関車2両で列車を挟んで運転する特殊な形態になっており、人手も費用も余計にかかる。季節波動性の高い農産物輸送ゆえ、機関車や乗務員の手配も困難である。


 また、強力な機関車が導入されたとはいえ、石北本線内の列車行き違い設備の状況から、最大編成長は11両に制限されている。5tコンテナ55個、275t分である。
 北見からの列車はこれらのコンテナに玉葱をはじめ地域の農産物を満載にして走る。ところが、札幌からの帰路に運ぶ荷物、いわゆる「帰り荷」は極端に少ない。以前1日3往復が設定されていたタマネギ列車が現在1往復しか運転されないのはこのあたりにも理由がある。列車に乗り切らないコンテナは北見からトレーラーで代行輸送されて、北旭川貨物駅で別の列車に継送される形になっている。


 こうした状況から、産地ではJR貨物が求める運賃の値上げを呑み、さらにはコンテナ68基を自ら調達してJR貨物に提供するなどの手を打ってきた。業界の協力を得て、農産物輸送用の段ボールを札幌地区の工場からJRコンテナで運ぶなど、帰り荷確保の涙ぐましい努力もしている。


 北見地区の玉葱生産量は増加傾向にあり、ただでさえ輸送力が逼迫しているが、最近ではそこにトラックドライバーの不足と物流コストの上昇が追い打ちをかけている。仮に貨物列車が廃止となれば、20tトレーラーに切り替えても14台〜15台の車両とドライバーを用意せねばならない。石北本線沿線では高規格道路の整備も進んではいるが、だからといって簡単に列車廃止、トラック輸送化ということにはならない事情がここにある。


 そしてもうひとつ、今回のJR北海道による「維持困難線区」の問題でにわかに注目を浴びたのが、JR北海道に対するJR貨物の線路使用料の問題である。


 JR貨物は一部の専用線を除いて自前の線路を保有しておらず、JR旅客各社の線路を拝借して列車を運転し、旅客各社に線路使用料を支払っている。
 国鉄分割民営化に際し、採算性が不安視されていたJR北海道・JR四国・JR九州の3社に「経営安定基金」を積み立ててその運用益を赤字補填の財源としたが、同様に赤字が予想されたJR貨物に対しては、これに代えて線路使用料の大幅な減免をルール化した。いわゆる「アボイダブルコスト・ルール」である。


 これは、「貨物列車が走らなかった場合に発生する費用」はすべて旅客会社の負担とし、JR貨物は貨物列車の走行により上乗せとなった費用分だけを線路使用料とするルールである。JR貨物が2016年度に民営化後初めて鉄道事業収支を黒字化したのは、JR貨物自身の自助努力による部分ももちろんあるが、アボイダブルコスト・ルールによる線路使用料の低減の力も見逃せない。


 石北本線のように旅客列車の本数が少ない区間では、重量の大きな貨物列車の走行による線路損傷のウェイトも大きい。こうした事情も踏まえてJR北海道としては線路の維持管理経費も含めて線路使用料を設定したいところだろうが、現状のルールでは不可能である。
 同様の事情を抱えている路線は他にもある。以前に取り上げた根室本線・滝川-富良野間も、北見に次ぐ玉葱の一大産地である富良野地区の農産物輸送に貨物列車を運行しているし、旭川・岩見沢方面からの貨物列車は札幌を避けるために室蘭本線・沼ノ端-岩見沢間を経由する。


 もっとも、アボイダブルコスト・ルールが、結果的にこれまで荷主に対する低廉な運賃を実現したことも見逃せない。
 
JAグループは、JR北海道に対しては石北本線の維持、JR貨物に対してはこれに加えて貨物列車の輸送力確保を訴え続けている。だが、JR北海道は路線維持の条件としてJR貨物に対し、「アボイダブルコスト・ルール」の適用除外を求めていくのは間違いない。そうなれば貨物列車が存置されても運賃はさらなる上昇が見込まれる。物流経費が上がれば北海道産農産物の価格競争力は低下する。値上げを認めなければタマネギ列車の将来はないだろう。一筋縄ではいかない問題がこの路線には横たわっているのである。


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2018/05/06

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【5】石北本線(その1)

Img_1027  今回、JR北海道が「維持困難線区」にリストアップした路線のうち、特急列車が定期運転される路線が2区間ある。宗谷本線・名寄-稚内と、石北本線・新旭川-網走である。
 宗谷本線は特急運転線区としての歴史はまだ20年に満たないが、石北本線は1964年10月、特急「おおとり」の運行開始以来50年以上の歴史を持っている。一時期は食堂車を連ねた9両編成のキハ80系ディーゼルカーが往来していた路線である。


 その区間が「維持困難線区」にリストアップされた。
 JR北海道によると、2016年度の輸送密度は、石北本線全線で980人/km/日となっている。うち新旭川-上川は1,229人、上川-網走は880人である。1975年が4,357人、国鉄末期の1985年が2,528人であったことから見ても、その落ち込み幅は大きい。
 それでも、鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議は、石北本線を「北海道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク」と位置付け、維持を前提とした検討を進めるべきであるとした。


 石北本線の役割としては、旭川・北見周辺での通勤・通学輸送と、札幌・旭川-北見・網走の都市間輸送がある。輸送量全体に占める特急利用客の割合は、旭川・北見近郊では半分に満たないが、中間の上川-遠軽では7~8割に達する。
 沿線で最も大きい北見市の人口は、2000年までは増加傾向にあったが、その期間も含め、石北本線の輸送量は減少の一途をたどってきた。2016年にJR北海道が発表した2015年度の特急列車利用状況では、減少傾向が続く各方面の中でも、石北本線だけが1991年度比で50%を切るという惨憺たるありさまである。


 札幌-北見間の営業キロは321.5km。この区間を特急「オホーツク」は約4時間半で結んでいる。この所要時間は国鉄時代からほとんど変わっていない。函館へはJR北海道自ら早くから高速化に取り組み、釧路・名寄方面では地元も出資した第三セクターによる高速化工事が実施され、いずれも新型車両の導入を得てスピードアップしている。


Sekihoku
 石北本線の場合は、北見峠、常紋峠という2つの険しい峠越えで線形が悪く、高速化工事のメリットが十分に得にくい環境にあった。このため、北見方面への高速化には一時、距離が長いながら平坦区間の多い北海道ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線の活用も検討されたが、この場合、沿線人口のきわめて少ない上川-遠軽の存廃問題に発展する可能性もあった。
 結局、この案は日の目を見ることなく、ふるさと銀河線は2006年に廃止となり、石北本線はその後も高速化や新車導入とは無縁のまま現在に至っている。


 札幌-北見・網走には、高速バス「ドリーミントオホーツク号」が運転されている。札幌-上川間では道央自動車道・紋別自動車道を走り、上川-北見間は距離の短い国道39号線(石北峠)を経由する。総距離は約300kmと鉄道より短く、札幌ー北見の所要時間は4時間35分~5時間と、鉄道との差は小さい。運行本数でもバスは夜行便を含めて10往復設定されており、1日4往復、しかも2往復は旭川で乗り換えを強いられるJRは分が悪い。


 もうひとつ、新千歳-女満別には、70席余りの小型機ながら、日航・全日空合わせて1日6往復の航空便が就航している。所要時間は45~50分。空港アクセスなどの時間を含めても、札幌-北見は3時間以内で結ばれる。費用の点からはともかく、所要時間では鉄道は全く勝負にならない。300kmそこそこの距離の区間としては非常に珍しい。


 やや古いデータになるが、国土交通省の全国幹線旅客純流動調査によると、2010年の札幌-北見・網走における交通手段別のシェアは、自動車52.5%、鉄道21.8%、バス16.1%、航空9.5%となっている。函館・稚内・釧路など道内の他の長距離区間と比較すると、航空とバスの分担率が高く、特にバスの分担率は突出している。鉄道の分担率は最も低く、対稚内にも劣る。少なくともこの区間に関する限り、利便性、速達性その他において、鉄道の位置付けは非常に中途半端だといえる。


 鉄道においてよく言われるのは定時性、安定性であるが、一連の事故を経たJR北海道が安全輸送側に大きく舵を切ったことで、列車の遅れは常態化し、異常時にはあっさりと運休に踏み切るようになった。そのこと自体が間違っているとは決して思わないが、結果的に鉄道の強みは大きく減殺されている。
 加えて2016年の夏から秋にかけての豪雨・台風により、石北本線は複数の箇所で路盤の流失が発生し、長期の運休を余儀なくされた。空港の復旧が済めば飛行機を飛ばせる航空、迂回により運転を確保できるバスに対し、線路がなければ走れない鉄道の脆さを露呈したともいえる。


 高規格道路の延伸により、このままでは今後も石北本線は厳しい戦いを強いられることは間違いない。道はフォローアップ会議の意見を踏まえ、路線維持の方向性を前提として車両更新等にかかる費用の助成を打ち出しているが、運行に伴って発生する赤字や今後必要となる線路維持費用の負担をどうするかはまだ闇の中である。
 この区間を北海道における「骨格」「幹線」と位置付けるのであれば、それなりの施策が必要であるが、こと石北本線に関しては、もうひとつ大きな問題を抱えている。これについては、次回あらためて触れる。


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2018/04/16

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【4】根室本線(滝川-富良野-新得)

Furano
 石勝線の千歳空港(現在の南千歳)-追分、新夕張-新得が開業したのは1981年10月のことである。このとき、追分-夕張の夕張線のうち、それまで紅葉山と名乗っていた新夕張までの区間が石勝線に編入されて、札幌と帯広・釧路を結ぶ幹線の一部となった。


 根室本線・滝川-新得の凋落はここから始まった。石勝線の開業前、札幌と帯広・釧路を結ぶ特急・急行のメインルートは滝川・富良野経由だった。石勝線開業を機に、特急「おおぞら」の全3往復と、急行「狩勝」4往復のうち2往復が石勝線経由となった。2往復がかろうじて残った滝川経由の「狩勝」も徐々に縮小されて1990年に廃止、快速列車に格下げとなって、この区間から優等列車が消えた。


1991046  それでも、富良野という道内有数の観光地を抱えていたこの区間では、JR発足後、行楽シーズンを中心に「フラノエクスプレス」などの観光列車を運行するなど旅客獲得に向けた努力も続けられている。
 しかし残念ながら営業成績は精彩を欠いている。石勝線開業直前の1980年度、4,944人/km/日だった輸送密度は、石勝線開業後の1985年度には729人となり、2016年度には滝川-富良野が432人、富良野-新得は154人となっている。


 沿線の自治体のうち、赤平市・芦別市は空知総合振興局に属し、岩見沢・札幌への志向性が高い。富良野市と南富良野町は上川総合振興局管内で、旭川との流動が大きいが、観光客も含めて札幌方面への一定の流動もある。ただし、4市町とも人口は減少傾向にあり、特にかつての産炭地である赤平市・芦別市はここ30年で半減している。


 とはいえ、富良野は、富良野線沿線にある美瑛町と合わせて、雄大な北海道の自然を楽しめる観光地として人気が高い。昨今では中国などからの、いわゆるインバウンド客も増加している。私は仕事で富良野・美瑛周辺を行き来することが多かったが、ドライブインやj観光名所、列車内も含め、時期を問わずどうかすると日本人より中国人の方が多いのではないか、と感じることもしばしばだった。


 インバウンド客は「ジャパン・レール・パス」など割引率の高い外国人専用パスを利用する人が多く、JR北海道の収益への効果は微々たるものかもしれないが、滝川-富良野間の根室本線は、札幌・千歳を基点とした旭川方面への周遊ルートに組み込み、観光列車やフィーダーバスなどと組み合わせたニーズの取り込みは図れるのではないかと思う。
 また、札幌-富良野間には高速バスも1日10往復が運転されており、地元住民も含めて一定の流動があることを示している。JR北海道の示すとおり、地域における負担等も含め、鉄道を残していくための協議は進められてしかるべきだと思う。


Dscn1060  一方、富良野-新得間の状況は厳しい。南富良野町の人口は2,500人あまりしかなく、そのほとんどが富良野を指向している。新得は十勝総合振興局管内に属しており、富良野エリアとの日常的な行き来は限定的である。

 2012年9月、私はこの区間を、当時日本最長時間を走る普通列車だった2429Dで走破したことがある。滝川始発時点から1両きりのディーゼルカーの車内を埋め尽くした内外からの観光客は大挙して富良野で下車。その先は十数人の乗客が残るだけになり、しかもその半数は、最長鈍行列車そのものを目的にやって来た「その筋の人」であった。

 ⇒参考記事 滝川発釧路行き・2429Dの旅(2) 富良野→新得


 加えて、2016年秋の台風被害により、東鹿越-新得(厳密には上落合信号場まで)間は線路がいたるところで損壊して不通になっている。復旧には10億5,000万円を要することから、JRは復旧に消極的で、代替も含めた効率的な交通体系が必要だとしている。
 災害が経営の厳しい鉄道の命脈を断つのは今に始まった話ではないが、行き着くところは金の話である。国も道もその素振りは全く見せない。自治体にしたところで、新得町が関心を示すとは思えず、富良野市と南富良野町だけで負担する力はないだろう。


Img_1528  南富良野町の中心にある幾寅駅。高倉健が主演しヒット作となった映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台になった駅である。
 駅前にロケで使用されたディーゼルカーのカットモデルが鎮座しているが、現在、本物の列車は発着していない。この駅に再びディーゼルカーのエンジン音が響く日が来る可能性は限りなく低い。


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2018/04/09

JR北海道「維持困難線区」は何処へ【3】札沼線末端区間

 札沼線は、札幌駅の隣、桑園から石狩当別を経て新十津川までを結ぶ路線である。もともとは新十津川から先、留萌本線の石狩沼田までを結んでいたが、1960年代後半からのいわゆる「赤字83線」のひとつとして、1972年に新十津川-石狩沼田間が廃止された。
 私の手元にある「時刻表」1964年8月号を見ると、桑園-石狩沼田を直通する列車が6往復、他に札幌-浦臼2往復、札幌-石狩当別2.5往復、浦臼-石狩沼田1往復が運転されているだけの純然たるローカル路線であった。


 現在の札沼線は、石狩当別の1つ先に新設された北海道医療大学と桑園の間が電化され、札幌口では日中でも20分間隔で電車が発着する都市型路線に変貌した。
 一方、北海道医療大学以遠は非電化で本数も激減し、石狩月形までが7.5往復、浦臼までが6往復。浦臼-新十津川間は2年前から1日わずか1往復の運転となっている。北海道医療大学-新十津川間の輸送密度は66人/km/日(2016年度)。1975年度から40年あまりでおよそ9分の1に減っている。桑園-石狩当別間が同じ期間で3倍以上に増えたのと対照的である。


 以上の状況から、JR北海道が維持困難線区として札沼線の末端区間を指定するのは必然であった。先日公表されたフォローアップ会議の報告書の中でも、この区間は12線区で唯一、「バス転換も視野に」と結論付けられている。
 これより前、2016年秋にはJR北海道から沿線自治体に対してバス転換の打診がすでに行われており、沿線自治体も鉄道存続を模索しつつも厳しい情勢にあることを認識している様子である。


 かつて岩見沢に勤務していた頃、私はこの沿線を営業でよく走り回った。石狩当別-新十津川の沿線は、水田を中心に野菜や果実を組み合わせた純然たる農業地帯で、沿線人口が非常に少ない。このエリアはほぼ平坦な地形で、全区間で並行する国道275号線の整備状況はよく、線形も悪くない。線路と国道は、月形町内と新十津川町内で500mほど離れるところがあるほかは、ほぼ「併設」に近い状態である。

Sassho
 空知総合振興局(昔の空知支庁)に属する月形・浦臼・新十津川の沿線3町の旅客流動は、振興局所在地である岩見沢と道内最大都市である札幌に向いている。
 この沿線から札幌方面へ向かう客は、バスや車で、石狩川をはさんだ東側を走る函館本線の駅へ出る方が利便性が圧倒的に高い。石狩月形からは岩見沢まで20km弱の道のりだが、北へ行くにしたがって2つの路線は接近し、新十津川から滝川へはわずか4kmほどである。一番近いところでは2kmほどしか離れていない。
 函館本線には30分ないし1時間おきに特急電車が走っている。札幌につながっているとはいえ、途中まで1日1往復ないし7.5往復の札沼線ではまったく勝負にならない。


 2018年2月16日にJR北海道から沿線自治体による「札沼線沿線まちづくり検討会議」に対して提案された新たな交通体系の案では、石狩当別(北海道医療大学)-石狩月形、石狩月形-浦臼、浦臼-新十津川の3ブロックに分けてバス路線を整備し、浦臼-奈井江、新十津川-滝川に運転されている既存バス路線と函館本線の連携による利便性確保も見据えている。一気通貫の代替路線が整備されないのは珍しいパターンだが、沿線自治体相互間の利用が極めて少ないこの路線の性格をよくあらわしているとも言える。


 ⇒JR北海道によるプレスリリースはこちら。


 「地域の皆様との協議をお願い申し上げたいと考えております」とプレスリリースは結ばれているものの、かなり突っ込んだ内容になっていることを見ると、沿線自治体との間では代替交通機関の整備に向けて水面下での打ち合わせがかなり進んでいるのではないかと思う。石勝線夕張支線と異なり、利害関係のある自治体が複数あることから、すんなりと話が進むとは思えないが、提案に沿ってブロックごとに自治体が個別交渉をおこなっていけば、案外早く結論がまとまる可能性もある。


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 新十津川駅は現在、「日本一最終列車が早い駅」として話題になっており、コアな鉄道ファンの姿も散見されるようだが、JR北海道による特定日調査の結果は、5年間平均で1日の乗客数は4.2人。北海道医療大学より北の駅では、石狩月形(79人)、浦臼(14人)の他はすべて平均10人以下で、浦臼-新十津川間の中間駅は4駅とも1人以下という惨憺たるありさまである。
 もはや地域が鉄道という存在をほとんど当てにしていないことが如実に示されているが、一方でわずか1往復という列車の設定からは、JR北海道も地域住民の利用をまったく当てにしていないことがありありと窺える。実に気の毒な路線だというよりほかない。



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