帰省百態【7】クルマとフェリーの旅(5) 商船三井フェリー「さんふらわあ」
積み残しネタと言えばもうひとつ、2年ほど前に書き始めてやはり中途半端で終わっていた札幌~岐阜間の帰省の話がある。
帰省百態【0】岐阜・札幌間の小さな旅
帰省百態【1】名古屋・札幌 空の玄関の28年
帰省百態【2】50時間のクルマ旅
帰省百態【3】クルマとフェリーの旅(1) 新日本海フェリー
帰省百態【4】クルマとフェリーの旅(2) 東日本フェリー
帰省百態【5】クルマとフェリーの旅(3) 太平洋フェリー その1
帰省百態【6】クルマとフェリーの旅(4) 太平洋フェリー その2
前半はクルマとフェリーの組み合わせでの帰省の話が中心になり、利用した航路もおおむね上記の3航路に集中しているが、最後にもうひとつ、これ以外で一度だけ利用した、苫小牧-大洗間の商船三井フェリーの話を書いておく。
北海道と関東をダイレクトに結ぶ航路は、かつては釧路-東京、苫小牧-東京、室蘭-大洗などが存在したが、1999年から2002年にかけて相次いで廃止、あるいは休止となり、苫小牧-大洗が唯一の存在となっている。
当時も現在も、この航路には夕方便、深夜便が各1往復運航されており、所要時間は18~19時間。私が利用したのは2007年12月29日、苫小牧発18時30分の夕方便、「さんふらわあふらの」である。ちなみにこの船は2017年に更新されており、現在の就航船は2代目。私が乗船した初代は、もともと東日本フェリーが「へすていあ」の船名で室蘭-大洗航路を運航しており、「へるめす」「はあきゆり」の姉妹船である。2017年に引退してインドネシアへ売却されたようである。
当時、私たち一家は岩見沢に住んでおり、上の坊主は4歳、下の坊主は1月に生まれたばかりの0歳児であった。
早くから子供を連れて札幌の実家に帰っていた嫁は、一足先に下の坊主とともに東京に住む叔父の家へと飛んでいた。28日まで岩見沢で仕事をこなした私は、29日の15時半頃、嫁の実家の両親に連れられてやってきた上の坊主と、苫小牧港フェリーターミナルで合流した。ここから坊主とふたりの船旅&クルマ旅である。
坊主は初めての船旅が待ち遠しくてしょうがないようで、ターミナルの外から、出航を待つ「さんふらわあふらの」と、仙台へ向かう太平洋フェリー「きたかみ」の姿を見て「ねぇはやくおふねにのろうよぉ」とはしゃぎ気味。16時半過ぎに車とともに乗り込み、カジュアルルーム(2等寝台)に荷物を置いて船内をひとまわりすると、目を丸くしながら走り回っている。
この日はちょうど国内各地に雪をもたらした気圧の谷が通過した日であった。わが船も相当の揺れが予想されたため、レストランでの食事前に酔い止めのアンプルを親子ともども流し込むが、案ずることもなく坊主は、あれもこれもと皿に乗せてきたバイキングの料理をぺろりと平らげ満足気である。
食後は大浴場へ。船が外海に差し掛かったようで、風呂の湯が大きく波打っては浴槽からこぼれている。大きなお風呂が大好きな坊主は、それもまた楽しかったようで、またまたおおはしゃぎ。風呂を上がった後も、船内を所狭しと駆け回り、船の大きな揺れで通路に何度もひっくり返るが、まったく平気である。
そんなこんなでやっと寝付いたのが22時過ぎ。つられてお父さんもそのままお休み。夜更かしすると絶対に早起きできない坊主が、翌朝7時にはピシッと目を覚まし、利口なことに一人で便所の場所を探し当てて用を足してきたらしく、眠くてしょうがないお父さんを必死でゆすり、
「ぼくえらいでしょ、ね、ね、だからはやくあさごはん~」
と猛アピール。お父さんも起きないわけにはいかず、手をひかれるままにレストランへ。朝食もいつもの3割増ほどの量をあっさりと胃に流し込み、再度浴場へ足を運ぶが、揺れのせいか浴槽の湯が半分以下しか残っておらず、入浴は断念となる。
あとはキッズルームで見知らぬお友達と遊んだり、展望デッキで海を眺めたりと、大洗まで20時間程の船旅を全く飽きることなく、また船酔いすることもなく、元気で大洗に降り立った。坊主は「すご~くゆれたねぇ。でもたのしかったね。またおふねにのろうね」とニコニコしながら語り、車が東京ヘ向けて走り出すとほどなく、助手席でぐっすりおねむになってしまった。
ところで私はこの航海の途中、車のカギを一瞬紛失して、坊主を連れてあちらこちらを探し回ることになった。30分近くかけて結局、展望デッキのソファの間にはまり込んでいたのを発見し、ほっとしたのであるが、よほどその出来事が印象に残ったらしい。以来、坊主が何か失くし物をすると「ちゃんと整理しておかないからだ!」と叱りつけるのであるが、そのたびに奴はニーッと笑って、「お父さんもフェリーの中でカギ失くしたよねえ」とのたまうので、二の句が継げない私は何の説得力も持たなくなる。
そんな坊主も18歳。誰かに似て受験票を忘れて受験に行くのではないかと、今から心配でならない。
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